クラゲに含まれるクニウムチンとクラゲの有効活用が進んでいない理由

2007年に理化学研究所と東海大学による研究チームがクラゲから「ムチン」の抽出に成功しました。クラゲから抽出されたこのムチンは「クニウムチン」と名付けられました。

有効な成分が見つかったことでクラゲの有効活用ができることが期待されていました。クラゲの大量発生に困っている人はたくさんいて、解決するのは悲願でした。ところがその後クラゲの有効活用を実際に行っているという話は聞きません。それはなぜでしょうか。

クニウムチンとプロテオグリカン

有効活用ができそうだというニュースの根拠として取り上げられていた成分「クニウムチン」はどういった成分なのでしょうか。

ムチンは動物性の粘液によく含まれている成分で、例えばカタツムリの粘液に含まれています。ただし植物性のネバネバには含まれていません。それだけでは普遍的に存在する成分ですが、クラゲから抽出されたムチンは人間の軟骨に含まれている成分「プロテオグリカン」と構造が似ていたそうです。

この時に発見された「クニウムチン」と人間の「プロテオグリカン」を比較した時に、クラゲの「クニウムチン」が進化したものが「プロテオグリカン」なのではないかという仮説が立てられ、研究が進められました。

理化学研究所が2009年発表によると「ヒアルロン酸」と「クニウムチン」を混ぜると再生力が高まり、変形性関節症の治療に効果があるといった実験結果も出ています。

クニウムチンは成分としてはとても有効に活用できそうです。

有効活用が進んでない理由

しかしながら、クラゲの有効活用は進んでいません。なぜなら、多くのクラゲは体のほとんどが水だからです。クラゲを輸送することは、不要な水をたっぷりと運ぶことになります。

ミズクラゲの場合は、97%が水で、2%が塩、残り1%が有機物で構成されています。もちろん、水と塩は非常に重要な成分ではありますが、もっと手軽に入手する手段がありクラゲから取り出すメリットはありません。

そうなると、もしかしたら使えるかもしれない成分は1%ということになります。1kgあたり多くとも10gしかありません。そして、10gの有機物も主に豚皮からも入手可能な水溶性コラーゲン類で成り立っており、クニウムチンのような有効活用が期待される成分はごくわずかしかありません。

クニウムチンがどれほど有効な成分であったとしても、ごくわずかしか含まれていないと商業ベースで大規模に活用していくにはコストが見合わないそうです。実際に有効活用するためには採算が取れなければ設備を維持することが出来ません。そのため、有効活用が進んでいないのです。

ムチン基礎研究には役立っている

ただし、ムチンという成分の研究にはクニウムチンはとても役に立っているそうです。クニウムチン発見の第一人者でもある丑田氏はクニウムチンについて「有利な材料」と記述しています。他の入手手段に比べて、クラゲからは不純物が少なく安定的にムチンの入手が可能で有用だそうです。

すぐにクラゲの有効活用にはつながらなくとも、クニウムチンの研究からさらに役に立つ結果につながるかもしれません。

参考文献

https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/65/5/65_228/_pdf
https://www.riken.jp/press/2009/20090130/index.html
https://www.natureasia.com/ja-jp/jobs/tokushu/detail/48